コクダイパン会議スタッフのBlog

コクダイパンよ大志を抱け!
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サポーターの思い
☆前回までのお話⇒ http://blog.kokudaipan.info/?eid=1171803
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日が落ちて暗くなった校内を早足で歩き、いつものように
西門を出て帰ろうとしたところで篤は足を止めた。
そうだ、今日はまだ帰れないんだ。一人ため息をつく。
本部1階のミーティングルームに集合だったかな
でもそんなことしてる場合じゃないんだよなあ、俺。
 
学内の若手職員向けにコクダイパンの報告会をやりたいから
打ち合わせをしようと、坂田さんから誘われていた。
2カ月前に横浜で開かれたその有志の会議に、篤も
坂田さんたち3人と参加したのだった。
 
指定された場所に着くと既に3人とも揃っていた。
この人数では少し寂しいくらいの広さの会議室だ。
まだ約束の時間まで数分あったが、一番後輩の篤は
何となく気まずくてすいませんと頭を下げた。
それからコートを脱いで、ロの字型になった机の
一角に固まって座る3人から一つ空けた席に座った。
待ちかねたように坂田さんが話し始める。
いつも通りの早口だ、何だか追い立てられているような
気分になる。
 
今回、坂田さんはまだ職歴の浅い職員を片っ端から
コクダイパンに誘っていたらしい。
篤がそれに応じたのは横浜に行ってみたかったからで、
会議に興味があったからでも坂田さんと仲が良いから
でもなかった。篤にとって大学はただの仕事場だった。
業務以外のことに思いを巡らすことはないし、同僚と
友人のように親しくすることも考えられなかった。
 
だから報告会をやると言われて正直困ってしまった。
坂田さんたちや会議に出ていた他の参加者のような
りっぱな考えなんて持ち合わせてない。
それに何より、今はそれどころじゃないんだ。
篤はカバンの中の携帯電話を机の上に出した
一応確認してみるが、やっぱり連絡は来ていない。
 
 
 
観光のために会議の次の日まで一人横浜に留まっていた篤は
その日みなとみらいの大桟橋で知らない女の子に声を掛けられた。
不思議な出来事だったがまるで前から約束していたみたいに
新幹線の時間までその子と一緒に過ごし、地元に戻った後も
連絡を取り合っていた。
 
彼女が、そっちに遊びに行こうかなと言ってきてから
もうすぐ2週間が経つ。篤はそこで怖気づいてしまった。
自分はこの子と付き合うことになるのかなとはっきりと
考え始めた途端、それ以上前に進めなくなった。
 
実は最初見かけたときから思っていた。彼女は篤が
半年前まで付き合っていた、大学時代の後輩に似ていた。
一見冷めていそうでそれでいて時折悪戯っぽく笑うあの
雰囲気に確かにそれを感じながら、気づかぬふりをしていた。
4年間付き合って突然振られたことを未だに引きずっていると
打ち明ける度に、情けないとか女々しいとか散々なことを
友人に言われるが、自分ではどうすることもできない。
 
だから篤は彼女のその言葉をはぐらかした。今はまだ無理だ。
決断を少し先延ばしにしたい。そう思ったのだが結果、
彼女からの連絡は途絶えてしまった。
このままじゃいけない、でも駄目なんだ。また辛い思いを
するんじゃないかって怖くて何もできなくなるんだ。
篤は目の前にある携帯電話の黒い画面を見つめながら
これまで何度も繰り返した言い訳をもう一度心の中で呟いた。
 
「あれ、その携帯新しいやつじゃない? 最近変えたの?」
不意に坂田さんに話しかけられた。慌てて顔を上げたが、
まったく話を聞いていなかったので、どうしていいかわからない。
「いいなー、それ。そうそう、横国の司会やってた人スティーブ・
ジョブズみたいな感じでかっこよかったよね」
坂田さんはすぐに他の2人と話し始めたので、篤は胸を撫で下ろした。
「確かに。あんな風に堂々と人前で話したいですよねえ」
「そりゃあやっぱり場数踏んで慣れるしかないんじゃないですか」
「そうか、じゃあ今度の報告会でがんばりましょうよ」
 
「そしたら、もういっそのこと来年うちの大学で
コクダイパンやっちゃおうか?」
唐突な坂田さんの提案に、他の2人は笑いながら首を振った。
「いやいや、それはさすがに無謀ですよ。人足んないですよ。
今回だってあんなに頑張ってこの4人ですよ」
「それに場所もねえ。うちのキャンパスにちょうどいいとこ
なくないですか。そもそも貸してくれなそうだし」
「そうですよね。みんな冷たいんだよなあ」
 
「何もしてないうちから言い訳始めるなよ。
じゃあ聞くけどさ。全然やりたくない訳?」
坂田さんの問いに2人は黙ってしまった。同時に、なんでだろう
今までまったく頭に入ってこなかった、不快だとさえ思っていた
坂田さんの声が急にはっきりとした輪郭を持って聞こえてきた。
篤の視線は無意識に、また携帯電話の画面に落ちていた。
 
「そりゃあ、できたらすごいとは思いますけど」
「まあ、もしやれるならやってみたいですよ」
「だったら怖がってないでまず頑張ってみない? やってみて
ダメそうになったらそこで考えても遅くないと思うぜ」
坂田さんの言葉が、心に直に降り注いでくるようだった。
このままいくら待っていても、あの子からの連絡はないだろう。
言い訳だけして何もしないで駄目かもしれないなんて
それで全部終わってしまうなんて、そんなのはやっぱり嫌だ。
 
「坂田さんすごいなー、かっこいいですね」「なんかワクワクしますね」
坂田さんは一人黙ったままの篤の名前を呼び、どう思うと尋ねた。
篤は反射的に良いと思いますと口に出していた。
 
やっと自分がすべきことに決心がついたような気がしていた
こじれた迷いは霧が晴れるようになくなっていた。
話し合いを終え、冷えた空気のキャンパスを3人の後ろに
ついて歩きながら、あの子にうまく告白できたらお礼に
コクダイパンのことちょっとは手伝ってあげてもいいかも
しれないと篤は思っていた。
 
 
おつかれさまでした。皆様にまた
お会いできるのを楽しみにしています。
横浜国立大学産学連携課の久保田でした。

 
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